古い価値観が邪魔をする中高年。カミングアウトされたらどうする?
どんな本なの?
築40年超の「加寿子荘」と愛すべき人々。偏愛と執着にまみれた自叙伝風小説!
そして、私は築40年を超えた下宿風アパートに戻ってきました。名前と性別を変えて……。25〜27歳の著者の日記とも言える一冊。
(文春文庫 公式サイトより)
舞台は、平成14年からの神楽坂です
齢80代女性の大家との交流の物語
著者は、エッセイストなど幅広く活躍中の能町みね子さんです。
題名の「お家賃ですけど」は、
毎月の家賃と水道代が手渡しだったため、その時の声かけの言葉です。
この大家の加寿子さん、齢80代なのですが、なかなかチャーミングな方。
そして、見習いたいほど、LGBTに対しておおらかなのです。
と言うのも、この著者は、性同一性障害と診断されます。
最初1年ほど男性として暮らして、
その後、女性となってまた加寿子荘に帰ってくるという荒技をやってのけました。
しかし、大家の加寿子さんは、最初は驚いたものの、全く動じない。
今から20年前の話なのに。
それもかなりのお年です。
どうしたら、そんな風に差別や区別なく生きられるのでしょう。
考えてみたいと思います。
「それでいいのよ」の一言で、多くの人が救われる
著者、入居した時は、男性でした。
しかし、手術を控え、風呂なしの部屋では生活ができません。
銭湯に入ることは、
流石にためらわれました。
そうなんですね。
泣く泣く、お風呂のついているアパートへと転居します。
ある日、加寿子荘、唯一の風呂付きの部屋が空いたことを知ります。
不動産屋さんが止めるのも聞かず、契約する若い女性(=著者)
性別も名前も変わっていたので、不動産屋さんも加寿子さんも、そりゃあ、びっくりします。
しかし、引っ越して挨拶に行くと、加寿子さんは落ち着いて
「ああ、はいはい。ほかの方には内緒にしておきますからね。うふふ」
(平成十六年 冬)
著者はこの反応に救われたようです。
普通なら、
ジロジロみられり
質問責めにされそうですが
こんなにサラッと
受け入れられたら
世の中生きやすいですよね
でも、やはり加寿子さんも抑えきれなかったようで、国勢調査の時、こっそり聞きにします
「ところで、あの欄は、どうされました?」
(平成十七年 秋)
あの欄とは。
一瞬考えて、ああそうか性別のことね、と気づく。私は用紙を見せて、
「あー・・まあ、こっちでもいいかなぁ、と思ってこっちにしちゃいました」
「そう、そうっ、それでいいのよ、ね、あたしも内証にしておきますから、どうせたいした調査じゃないんだから、ね」
認められるのって
嬉しいですよね
加寿子さん、決して
腫れ物に触るような態度も
取らないのよね。立派ね!
二年弱を空けてこちらに帰ってきたら性別が(見かけ上)変わっていた私に対して、八十を超えると思われる加寿子さんがこういう心遣いを見せてくれる。私は事情を特に話したわけでもないのに、ほほえましくありがたいことです。村のあばら家にかくまわれた、追われる姫のよう。
(同上)
世の中、いろんなカミングアウトが増えました。
中高年は、やはり戸惑うことが多いのではありませんか?
私もそうです!
そんな時、自分の価値観を押し付けては絶対にいけないようです。
・相手を認めること ・必要以上に詮索しないこと ・相手が話す時は聞くこと
加寿子さんから、そんなことを学んだような気がします。
守られているって感覚、
嬉しいですよね
これからますます多様化します。
いつまでも柔軟な心の持ち主でありたいですね!
そんなおおらかな一面のある加寿子さんですが、家賃の支払いにはうるさい。
少しでも無連絡で遅れると・・・・
あのね、ここに住んでいる方にはね、そういうだらしない方は一人もいないんです。そう言うことをされるとね、困るんです。
(平成十四年 春)
この厳しさがあるから、信頼できる人として愛されるのでしょう。
いくつになっても
こうありたいものです
人生のお手本のような女性、ぜひ本を開いて、会いに行ってみませんか?
まとめ
これからますます多様化する社会になる。
中高年、個人の価値観を全く変える必要はないけど、他人の生き方にとやかく言わない。
いくつになっても柔軟な心を持って、まずは、受け入れる
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